ペストが変えたもの

7世紀に中国で発見され、シルクロードに乗ってヨーロッパにも伝染し、猛威を振るった感染症「ペスト(黒死病)」。ペストが大流行した14世紀ヨーロッパでの犠牲者は総人口の約1/4とも言われており、当時のヨーロッパ人口を1億人とした場合、死者は約2500万人にも昇る。

周りの人間の4人に1人が同じ病気で次々と死んでしまう状況は明らかに異常であり、当時のヨーロッパの雰囲気は凄まじいものがあっただろう。

 

さて、そんなペストの大流行であるが、人々の考え方にも大きな影響を与えた。大きく2つあるので、1つずつ説明していきたい。

 

封建社会から資本主義社会への移行

 

言わずもがな、当時のヨーロッパはガチガチの封建社会。通常、土地を保有している領主に逆らうことは絶対にできないという状況であったが、ペストは偉いからかからない、偉くないからかかるといったものではない。故に、偉い人間(領主)もバッタバッタと死んでしまい、その結果食糧を生産できる農民の地位が急激に上がった。緊急事態の際には、皆がまず確保を目指す第一次産業が強くなるのは当然のことだ。ペストが社会の身分構造を変えたのである。

 

キリスト教への疑念

窮地に追いやられたヨーロッパの人々は当然神にすがる。しかし、神に祈ってもペストの猛威は収まらず、犠牲者は増えていくばかり。そんな状況下で、1つの疑念が人々に浮かんだはずだ。

「なぜ、神はこんなに苦しんでいる我々を助けてくれないのか。」

そんな流れの中で、一神教であるキリスト教とは対象的な、多神教を主としたローマの古典文化を再生を目指す、ルネサンスという考え方が広まるに至った。

 

感染症とは人々の生活様式、そして考え方さえも大きく変える。今回の新型コロナによっても、zoom会議・授業が主流になり、またマスクをしていない人は悪といった風潮が出てきたりと、我々の生活も大きく変わった。

いずれはコロナもペストの様に収束(正しくは、インフルエンザのような存在になる)するだろうが、その際、他人の意見に流されず良いものはそのまま残していきたいものだ。